グアム日本人会商工部主催 トップマネージメント座談会 建設業界編
2015年7月27日 於ホテルニッコーグアム
       参加者 秋 林鎬 様 株式会社大林組 グアム事務所長
       椎野 武幸 様 三井住友建設株式会社 グアム事務所長
       立花 留義 様 株式会社きんでん グアム事務所長
       中村 一樹 様 OYO Corporation,Pacific 副社長
       比嘉 勉 様 株式会社淺沼組 グアム営業所長
       目黒 大二郎 様 株式会社NIPPO グアム工事事務所長
       司会 釜山 義彦 日本人会 商工部長

司会:

皆様お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。今回、商工部でトップマネージメント座談会というものを企画し、第1回目といたしまして、グアム建設事情についてお伺いしてみようということになりました。私は、建設は全くの素人なので的確な質問も出来ないかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します。まずは皆様の主なお仕事の内容や様子などのご紹介を頂けますでしょうか。

【参加各社紹介と業界の概要】

秋 :

大林組はグアムに事務所を開いて5年です。私自身は、海外駐在が20年余りになります。
東南アジア6~7年、アメリカ本土7年、グアム5年と海外畑ばかりです。
グアムにオフィスを開いたのは、沖縄海兵隊のグアム移転がターゲットでした。弊社の海兵隊移転への取り組みは元々10年ほど前に始まり、5年前に移転関連の仕事を2件受注したことで、こちらにオフィスを開いたという訳です。そういう意味ではまだグアムに根付いていると言えませんが、現地のマーケットに入ろうとグアムやアメリカ本土の業者と協力し、彼らに教えてもらいながら、会社ぐるみで勉強しながら事業を広げようとしているところです。

目黒:

NIPPOと言いまして、昔の日本鋪道という道路屋です。グアムでは2010年にアスフ   ァルトのプラントを立ち上げて、道路工事以外に、空港の滑走路、民間の駐車場だとか、民間の建築物のリノベーションなども手掛けています。

立花:

きんでんコーポレーションです。我が社には、子会社のきんでんパシフィックコーポレー   ションがあり、両社でやっていましたが、3年前、きんでんパシフィックを休眠化させ、   現在はきんでんコーポレーション1社でやっています。業務内容は、設備と電気の二通りですが、設備工事は生まれたてで1億以上はできないだろうという規模なんですが、電気工事は上限無くいくらでも出来ます。

うちは、ほとんどサブコンで、建築業者さんの下請けでやっています。ですが、たまにメインコンでやれる仕事もあります。8年ほど前、GPA(Guam Power Authority)という電力会社のアンダーグラウンドをマシンで掘って行く工事を「簡単にできるだろう」と考えて受注しました。ところが、機械がグアムの地層に合わなくて、いくら穴を開けても配管が敷設できないということが分かり、結局は失敗に終わったこともありました。このように、二十数年、失敗と成功の繰り返しで、今のきんでんがあります。

中村:

応用地質株式会社と言います。昔は地質調査専門にやっていましたが、現在は設計もやっています。グアムに事務所はあるのですがこれは名前だけで、実際にはライセンスの関係で現地のOYO Corporation Pacificいう子会社で仕事をしています。厳密には建設業ではなく建設関連業になります。建設に関する仕事が米軍とか政府から出る場合は、Feasibility Study、調査、設計があって建設にわたります。この最初のFeasibility Study、調査、設計を担当させてもらっています。私どもも、沖縄海兵隊のグアム移転を狙って5年前にグアムにやってきました。

また、それ以外に、建設業者は工事を進めている途中に地質などの確認を有資格者のThird Partyにお願いをしなければならないという連邦政府のルールがあり、そういう時にその専門業者を派遣するという仕事もさせてもらっています。

比嘉:

浅沼組です。日本ではだいたい中堅クラスで、グアムでも中堅でかれこれ30数年やっています。恐らく日系企業としては前田道路さんに次いで2番目のグアム進出だったでしょうか。グアムを拠点に、サイパン、パラオ、ミクロネシア連邦といろいろ仕事をやっていましたが、今はもうグアムだけです。

当社は、派手で大きな工事は殆ど無く、だいたい政府関係のパブリックワーク、住宅供給、上下水道局など現地企業と競合しながらやってきました。工事の大部分は政府関係の入札で細々と永らえてきており、これからも状況は変わらないと思います。グアム政府はなかなかお金がなく厳しいところがありますが、かと言って連邦政府関係の仕事は米国本土から大手が出てきてなかなか入り込めないという状況です。昔は、米軍も空軍基地の工事など単発で発注して取れることもあったのですが、現在はプロジェクトが大型化して米国本土から大手業者が入って来て、我々日系は勝負になりません。

そのような中で、これからも政府関係の仕事を中心に続けていくと思います。

椎野:

三井住友建設です。当社は1984年にグアムに事務所を開設し現在に至っているので、日系では浅沼組さんに次いで3番目の進出ではないかと思います。当社は、土木部隊と建築部隊の両方を持っていて、土建工事の両方をやっています。NIPPOさんのような舗装施設はありませんが、それ以外の建設工事であれば何でもやらせて頂けます。

土木工事では、基本的に政府の工事はほぼ全てGIAA(Guam International Airport Authority)、 DPW、GPA、 GWA、 GTA等すなわち空港と道路、電気・水道等全部やっていますが、特に空港は30年以上途切れずにやっていて、最近ではILS(計器着陸装置)の施工などもやりました。民間の仕事も若干ありますが、公共工事を主にやっています。

建築工事としてホテルやコンドミニアムでは、レオパレス様のホテルとコンド、Westinホテル、オンワード様のタワー棟、山野井様のPIAリゾート、PIAマリーン、またブルーパシフィックラテス、テシオなど、最近では、NANBO Insurance様のオフィスビルやアンブロス様の事務所・保冷倉庫などもやらせて頂いています。特にレオパレス様の場合は1989頃着工した一期工事から始まって、現在も追加施設の建設やメンテナンス関係のお仕事などもやらせて頂いてます。

私自身は、レオパレス様の一期工事に来て5年間グアムに居て、その後他の国を色々回ったのち海兵隊移転案件に絡んで7年前再度グアムに戻って来ました。

司会:

ありがとうございました。

秋 :

因みにグアムに於ける建設業はすごく大雑把に分けると、一つ目はグアム政府が出件する工事で電力公社や水道公社など、二つ目は連邦政府の出す米軍主導の工事、三つ目はプライベートセクターいわゆるオーナーさんがビルを新設するとかコンドミニアムを増改築するなどの工事に分けられます。恐らく皆さんそれぞれターゲットにされている分野や工事の種類も違うと思います。私が見る限り、あまりぶつかることはなくて、例えば今日来ているメンバーで線を引くと、こちらはゼネコン(大林組、三井住友建設、淺沼組)、こちらは建設の専門業者さん(NIPPO、きんでん、応用地質)ということになり、またそこで狙っているターゲットが違うのだと思います。

【グアムの建設事情とその規模】

司会:

正に今そこをお聞きしようと思っていたのですが、ターゲットが違うというとであれば、皆さんの間であまり競合をすることはないのでしょうか?

椎野:

お客様によっては完全に競争になることもあります。例えば空港案件についてはよく競争になるのが、NIPPOさんと前田道路さんと当社(三井住友建設)で、ゼネコンの部分について競争させて頂いてます。また民間の方であれば、浅沼組さんと当社の建築部門で競争させてもらっています。

司会:

先程仰っていたグアム政府と、米軍、民間では工事は均等にあるのでしょうか? 金額的にざっくり言うと、どんな感じなのでしょうか?

秋 :

統計を見ると米軍は年間300億~400億位でしょうか。プロジェクトの大きさや、その時の予算によって左右されますが。恐らくプライベートセクターも同じくらいの規模です。

椎野:

そうですね。ここ20年ぐらいずっと200億~500億の間で推移していて、プライベートセクターと公共工事を含めた数字です。昔は米軍関係は200億前後で出ていたと聞いています。確か去年は、850億位の発注があったと聞いています。

司会:

グアム政府の工事は小さいのでしょうか。

秋 :

グアム政府は、連邦の中の”米軍ではない部分”と言っても過言ではないくらい連邦政府に予算の割り振りを依存しています。グアム政府自身がこういう物を造りたいのでいくら、と言うレベルではなくなって、とにかくどんどんワシントンに向けて、ロビー活動を行っているのが現状です。毎年の予算額に大きな波があって、グアム政府が建設に割り振れるお金は、本当に年によって全然違います。

椎野:

最近のDPW(Guam Department of Public Works)の工事資金もほとんどがFederal Fundで、GIAA案件も同様だと思います。GWAの場合は最近でも178億の債権を売って138億を建設資金に回すなど、債権販売により建設資金を確保することもあるようですがグアムの公共工事においては一般的に連邦政府の資金に頼ることが多いと思います。

中村:

2,3年前に見たグアム政府の予算では、DPW分は5~8%しかなく、要は人件費のみで工事費は一切入っていないようですね。

椎野:

ここ5年ほどで実施された島内の幹線道路を全面的に改修するプロジェクトの総予算、160億だったか180億だったかの金額も、ほとんどが連邦予算だったはずです。

目黒:

いわゆるグアム州政府の本当のお金というのは、幹線道路ではなく、どこかの集落に入って行く道路とか、そういうところに使われる小さなものですね。

秋 :

グアム政府は、道路補修などの予算を何とか米軍のプロジェクトとして発注してもらって修理していこうとするので、グアム政府自身がインフラを整備しようというモチベーションは湧きにくいですね。それよりも観光とか、自然保護とかにお金を使おうとするモチベーションの方が強いと思います。

司会:

立花さんと中村さんの処では、競合はどのような状況なのでしょうか。

立花:

電気工事関係では、小さいところは別として2年前から日本企業が一社出ています。しかし、ローカルの会社が星の数ほどあってそれとの競合となるので、逆に地元からはきんでんは高いと言われています。

【グアムにおける日系以外との競争環境】

司会:

次はそこを聞きたいのですが、日系は概ね分かりましたが、ローカルや米国以外の他の国の建設会社の状況というのはどうなのですか。

秋 :

現在のグアムの建設業界においては、中国からの参入企業が少ないのが特徴的です。東南アジアでは、ほとんどの建設マーケットで中国企業がある程度のシェアを持っていて、どうしても材料費や人件費で勝てないのですが、グアムは日本企業にとって幸いにもまだ東南アジアよりも状況は良いかと思います。それでもやはり、フィリピンや韓国の会社と競うことになります。

司会:

米国の会社が、一番の競争相手になりますか。

秋 :

皆さんそれぞれ違うと思いますが、私どもの場合、競合相手はほとんどが米国本土の企業になります。比較的大型工事をターゲットにしているため、地元の建設業者とぶつかることはあまりありません。

椎野:

米軍に特化されているというような感じですね。

秋 :

そうですね。比較的大型の米軍関連工事で、特徴が生かせるような工事に応札していくのですが、大型工事をターゲットにしている会社が現在のところあまり多くないので、常に同じ業者と戦っているという状況です。

司会;

目黒さんのところは、どうですか。

目黒:

道路については地元に大きい会社がありますが、入札案件によって例えばDPWが出す普通の工事だと、フィリピン系の会社や韓国系の会社と競合します。道路工事においては、アスファルト合材を出す会社としては、他に一社だけあります。

司会:

立花さんは、先ほどローカルが山ほどあると言われましたが、どうですか。

立花:

はい、山ほどあります。ただ、ラッキーなのは、米軍や政府にはボンドを積まないと、工事が出来ないので、そのボンド額によって小さい業者は落とされていくわけです。そういう中で、大型物件について、うちが残って取れたということがあります。

司会:

中村さんの処は、地元と競合しておられますか。

中村:

競合は地元とだけですね。面白いのですが、我が社は米国本土の業者には強かったです。以前、米国本土から来た会社が3社あったのですが、全部帰って行きました。残っているのは30年前からある地元の2社のみです。ただ我が社にも例えば設備が不十分であるなどの問題があったりして、まだまだ地元2社のライバルとなれるような段階ではありません。

司会:

大きな案件では、ジョイントを組んだりすることはありますか。

一同:

そう言えば、ここではあまり聞きませんね。ほとんどゼロですね。

秋 :

弊社はグアムではまだまだ新参者で、地元事情に精通しているとは言えませんので、今のところはローカルの業者と二人三脚でやっているという面はあります。

【グアムにおける建設の将来の見通し】

司会:

先ほどグアム政府の仕事は小さいが、軍関係と個人はそれぞれ300億程度あるとのことでしたが、これはあまり景気に影響されなくコンスタントにあるということでしょうか。

椎野:

以前はずっと落ち込んでいって200億位まで落ちていましたが、それがここ3年位ようやく上向いてきて今のような状況になっています。

司会:

その理由は何でしょうか。

秋 :

政治的な要因もあると思いますが、「大統領予算のうちのグアム向け予算がどれくらい承認されるか」などといった米国本土の情勢に大きく左右されます。グアム建設向けの予算が非常に少ないということもありました。米国もここ数年は景気が良くなってきましたが、4、5年くらい前までは様々な要因で落ち込んでいました。本土の影響が多分にありますね。

また、年間200億の予算があっても、工事が100億だと2件しか出件できません。小規模な工事がたくさん出ると、それだけ多くの建設会社が工事を受注する機会が増えます。出件される工事のサイズによっても大きく左右されますね。ある年は400億だけど大型工事が6件とか、別の年は200億だけど工事の数は15件だったりします。

司会:

今の話は連邦政府のものだと思うのですが、プライベートのものも上向いて来たという理解で良いのでしょうか。

椎野:

米軍関係がようやく本腰を入れて始まったということで、今度の3月までに連邦政府から900億が出ます。また、それより大きい金額が日本政府の資金(真水)から出るということが、2年前くらいから実質的に動き出しています。それに伴い、民間の投資も活発になります。ショッピングセンター、住宅関係、特にアパートなどの新たな住宅需要が喚起されているのと、それにまつわるビジネスも出て来ています。

中村:

旅行もそうですね。昨年の3月は1987年以来の1ヶ月の旅行者数を記録したという事で、あきらかにグアムを訪れる人が増えているということですね。

比嘉:

人口自体も増えてきていますので、民間の需要も増えていますね。レストランや韓国系のツーリストも増えてきていますから、ハイエンドのリテールが頻繁にリノベーションをしていて、弊社もそれによってここ2、3年来コンスタントに受注しています。

司会:

お話を聞いていると、結局連邦政府が出す米軍関係の予算額の影響と、旅行者が増加して活気づくという、この二つで景気が決まっているということでしょうか。

比嘉:

周囲の島々からも仕事をするために人が集まってきます。そして人口が徐々に増えていくということがありますね。

司会:

海兵隊の移転に関わる動きについては今後もこのような状態が暫く続いて行く、と言う見通しでしょうか。

秋 :

米軍の発表によると2016年~2017年に発注額がピークに達するとしています。2012年に一度予算が縮小されたことがありましたが、移転後の予算の中の一部は日本政府が出資することになっています。私どもはこれらの工事にも期待しています。今後は日本政府出資のプロジェクトも比較的コンスタントに出ると前向きに予想しています。

比嘉:

2012年の時は日本政府から出ると言われて、皆すごく期待していたのですが、それがなくなったんですね。日本政府の金ですから「皆に平等にやります

と言われるのですが、米国政府も平等にやるのですが、そうなると我々には平等にならないのですね。なぜなら、我々はノウハウも知らないし規模も大きくないからです。米軍関係の仕事をしてきた日系企業は余りなくて、経験もなく、なかなか受注は難しいですね。米軍専属で仕事をしてきた企業が受注してきてますので、戦略的にそのような企業とジョイントベンチャーを組んでやるというのが、我々日系が入る方法ということになります。

司会:

今、ここに日系企業として皆さんがいらっしゃいますが、今後、海兵隊の移転に関して、新たに日系企業が入ってくるような事はあるのでしょうか。あるいはこれで落ち着いているということでしょうか。

一同:

入ってくると思います。

中村:

例えば沖縄の某建設会社は、今でも時々いらっしゃってますよ。

秋 :

おそらく日本国内の建設需要もしばらくすると減退してくると思います。東北の復興事業も現在は緊急復旧が進んでいますが、震災後に計画された復旧作業が終わってくると、日本の建設会社は再度、ターゲットを海外へシフトして行くと考えます。どの会社も一定の仕事量を確保して行かなければ会社の規模を維持していくことが出来ません。来年か再来年がその時期にあたると私は考えていますので、その時期にグアムに進出する日本企業が増えてくるものと思います。

椎野:

皆さん、具体的にそのような情報は聞かれてませんか。私には、そのような情報が入って来ていないので、どうなのかなと。

秋 :

その先陣としてということではないですが、現在、米国本土からグアムに建設会社が入ってきています。私が聞いたところでは、新規参入企業が新しいチームを組んでマーケットに進出しようとしていますが、これは米国本土の建設景気が少し横ばいになってきていることが背景にあると思います。

ただ、米軍関連工事はグアムではそんなに規模は大きくありませんし、グアムのマーケットもなかなか特殊な世界で、限られた数の企業が小さなパイを分けあっているところがありますので、他の米国本土の企業も参入しようかどうしようか迷っているという感じではないでしょうか。

【建設業界が抱えるグアムでの問題点】

司会:

米軍の仕事というか連邦政府の仕事は、米国の企業が優先と言うことはあるのでしょうか。あるいは、平等に扱うと言いながら現実的な障壁があるとか。

秋 :

そのような傾向はありますね。米国のルールは表向きは平等になっているのですが、実務に入るとその差が顕著に表れるようなケースもあって、やはり日本企業にとっては障壁になります。日本政府出資で米軍施設を整備するプロジェクトについては、日本の企業に対して多少のアドバンテージがあっても良いのではないかと、単純に思います。

椎野:

米国政府が資金を拠出する案件については、米国以外の企業に足枷が付いています。ローカルプレファランスと呼ばれていて、米国企業より20%以上安くしないと取れないよという仕組みですね。また、それ以外にAmerican FlagだとかBuy Americanと言って、アメリカの船を使ってアメリカの製品じゃなきゃいけないよとか、いろいろありますね。当初外務省や防衛省の方が聞き取りにいらっしゃった際、日本政府が資金を負担する案件について、同様のアドバンテージは無理としても、日本企業が有利になるような仕組を検討願いたいという希望を強く申し上げたのですが、今のところ実現されていませんね。

比嘉:

米軍関係の仕事については過去の実績が無ければ受注できなくて、そこでもうダメですね。あとは国と国との力関係、防衛省と国防省の力関係によりますね。

秋 :

日米両国間の工業規格の問題でも、難しい点があります。日本はJIS等の規格を持っています。米軍工事は全てが基本的に米国規格ですので建設材料の調達に関しては米国企業の方が有利になっています。日本から材料を仕入れようとしても規格が適合しないケースが多く、米国本土の材料業者に発注さざるを得ないケースがほとんどです。さらに海上輸送に関しては、米国船籍の船を使わなければなりません。入札する時も、工事を進める時も、日本企業には大きなディスアドバンテージがあり、米国企業と対等に戦うのはとても難しいですね。必ずしも条件が平等だとは言い切れません。

司会:

目黒さんの処は、連邦政府や米軍関係の仕事を直接取ったりしておられますか。

目黒:

うちは下請けなので、米軍で言えば直接入札には参加しません。落札した企業からとります。 舗装の材料で言えば、7000トン、8000トンの資材を船で運ぶ場合、全てが米軍の物ばかりではないので、これは米軍の物、これは他の物と分けることが出来ませんので、米国船籍の船を使わねばならないかということについてはグレーな部分です。しかしこの点については、この島でこれしか手に入らないという中でやらねばならないのは競争相手も同じ条件ですから、そこでの差はないですね。

司会:

建設資材とかはみな米国本土から持ってきているということでしょうか。

一同:

いろいろですね。

中村:

因みに、関税は米国本土からもってきても、日本から持ってきても同じです。カスタムは完全に独立していて、どっちから持ってきても4%かかります。USE TAXですね。

椎野:

かるものとかからないものがあって、重機類はみなかかってきます。

立花:

電気製品にはかかりません。GRT(Gross Receipt Tax)は4%かかりますが。ただ日本から持って来ると、規格や法規が違うため使えません。グアムで仕事をする限り、米国の物を使わなければ、仕事が出来ません。

秋 :

日本の材料業者の中にも米国規格に適合する材料を作っているところがあるのですが、現地(グアム)に常駐している材料取り扱い業者がいらっしゃらないですね。

比嘉:

また、グアム政府の仕事でも、連邦政府から資金が出ているため、仕様書に米国製品を使えというのが書かれていますね。完全な民間であれば、どこを使っても良いのですが。

秋 :

ローカルの中小業者もきちんと連邦法で守られていて、米軍工事では、義務ではないのですが、「工事費用の何%以上は中小零細企業に仕事を発注しなさい

というレコメンデーションが付いてきます。したがって入札をする時にそのあたりの条件も考慮しておかないと、入札評価で不利になったりします。「ハンディキャップの人を雇用する中小企業を優先的に採用しなさい

とか、「環境について特別な基準を満足するよう配慮するように

というような特別なリクエストもあります。

比嘉:

その際に対象となる企業も米国企業でないとQujalifyしないので、それを狙って資格を持った企業が米国本土から入ってきて我々と競合していくという状況もあります。

司会:

民間の仕事にもそういう縛りがあるということですか。

比嘉:

いえ、政府の仕事のみです。グアム政府でも連邦予算からファンドが来ている住宅や水道局などには、縛りがあります。

秋 :

先ほどお話しに出た米国船籍の船の使用義務については、工事全体の費用を下げるという意味では現実的に機能していないケースもあります。特に東南アジア地域からの材料の輸入についてはアジア周辺で米国船籍の船を調達できない場合、追加費用がかかるのにわざわざ北米本土から船を調達しなければならないわけです。二次的な費用がかかるため、全体の工事費を持ち上げることになり、発注者にとってプラスにならないケースもあります。

比嘉:

昔、それならどうすれば米国籍の企業になれるのかと考えましたが、ハードルが高いのです。米国人を雇えば良いではと考えましたが、経営者も50%以上米国人でなければならないとかあるのですね。

秋 :

米国企業を買収する方法があります。ただしM&Aは、全然違うマーケットにいる会社を買収する場合は新規開拓として成功しますが、同じマーケットの中でM&Aをやると入札機会が減るのですね。例えば、二社が入札出来るのが一社になり、単純に受注確率(工事獲得確率)が下がってしまいます。

司会:

仰っているのは、機会も多くあり、仕事も大きいのが少なくあるより小さいのが多くあった方が良いということでしょうか。

椎野:

会社の考え方によって違うと思います。

比嘉:

米国の会社が何社か来ていますが、だいたいが米軍OBが天下りで入っていますね。米軍人は皆からリスペクトされていて、OBの人たちもプライドを持って営業に当たります。また、自分が入札審査をしていたので、そのノウハウを知っています。そのノウハウを持って、企業に入って書類を作るのですから、勝てるわけがありません。

【エンディング】

椎野:

日本人会における商工会議所の機能として、今後どのようにサポートしてもらえるか?ということをお聞きしたいのですが、今までより一ランクアップしたと考えて良いのでしょうか。

司会:

高木会長は、日本人会商工部は「将来の商工会議所の母体です」と言われています。

商工会議所として、どのようにやっていくのかというイメージは、私個人はまだ全然わいていませんが、今回の座談会のようなこともやりながら、模索していきたいと思います。

秋 :

海兵隊移転については日本の政府からの出資もあるため、防衛省や外務省でこのプロジェクトに関係している方々からお話を聞く機会があればと思います。機密情報の部分はもちろん話せないでしょうが、公開できる範囲で今後米軍工事がどうなるのだろうというようなことをうかがえればと思います。そのような機会を設けてくれるよう、公式なところからリクエストしてもらえれば大変嬉しいです。

椎野:

日本では、防衛省が何回か業者を集めて「お話を聞きたい人は来て下さい」
というような場を設けていますので、ここでもそういうことをやって頂ければと思います。

一同:

日本人会と総領事館で話して頂けないでしょうか。

司会:

皆様のご要望は宿題として持ち帰ります。

1時間ちょっと、あっという間に過ぎてしまいました。拙い司会でしたが、いろんなお話を聞かせて頂き大変勉強になりました。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

商工部