宇和島駅から始発の電車に乗った。売店で目にした「愛媛に乾杯」を迷わず手にして、3両電車の真ん中の車両を陣取った。客は私と一回り先にシニアをエンジョイしている姉と二人だけ。ジャコ天をつまみに二人で地元に乾杯。今は高級品となっているこのジャコ天、昔は一枚5円くらいではなかっただろうか。肉はほとんど口に出来なかった田舎でジャコ天は貴重なタンパク源。煮物、おでん、カレー、寿司、うどん、そのまま食す・・と料理の主役、脇役として大活躍した。ビールとの愛称は抜群であった。

 渉外広報部の新顔として一筆をということで何を書こうか思案、シニア万歳? やっぱ愛媛に乾杯だなとお国自慢にした。

 祖先の墓参りを終え高知県まで足を延ばす予定であったが、明日には台風5号が四国に上陸というニュースで、急遽予定を変更して宇和島を散策することにした。その昔、宇和島の町まではバスに乗って50分、賑わったいた商店街は、今はシャッター街と化していた。高校生の頃初めて入った喫茶店、クリームソーダの緑色とバニラアイスの白、さくらんぼの赤い色がグラスの中に冴え、ぷつぷつの泡がとても新鮮であった。

 ホテルの近くに伊達秀宗が藩主であった宇和島城への登り口があった。幸い雨が止んでいたので何十年振りかで登ることにした。登り口には杖が何本も立てかけてあり、足を悪くしていた姉は2本取りいざ石段を上がる勢いであった。私は老いた母を気遣う心境で、石段を途中まで登ったあたりで「無理なんやない」とあきらめさせ、淡い思い出がある宇和島城をあとにした。
 近くには天紗園もあり初めて中に入った。台風の前日ということもあってか客はいない。地元のシニアは無料とのことだがIDがない。受付には伊達家に関しての歴史絵本が置かれており入場者には無料、姉は小学生の孫にお土産にと数冊を手に取った。春はきれいだろうなと思わせる池をはさんでの藤棚があり、咲き遅れた白い藤の花が数本あった。竹林では苔の緑が雨の降る庭園をいっそう引き立たせていた。庭園の手入れはきちんとされていて、有名な観光名所に負けないくらい風情のある日本庭園であった。小雨の中、手入れをしているおじいさんに「きれいに手入れをされていますね」と思わず声をかけた。すぐ側には伊達家一族の博物館があり、これもきちんと管理をされていた。館内写真は禁止と立て札があるのを横目に見ながら携帯で写真を撮っているシニア(私ではない)がいた。

 真珠養殖やミカン栽培を産業としているが、三重県や和歌山県のように目立っていない。歴史にちなんだ観光名所もある。地味に楽しみたい人には絶対の穴場ではないかと思う。

新編集委員 K.D