《私の朝食は2枚のバタートーストに自家製のマンゴージャムをたっぷり載せて頬張るという簡単なものです。3日ほど前からトースターを使う度に異臭が漂うので、今朝、裏蓋を外して見ました。すると居ました。10センチ位のヤモリ(守宮)が半黒コゲ状態になって張り付いています。パンに押されて逃げ場を失い、哀れ焼身自殺とは参りました。
 昔からイモリ(井守)の黒焼きは惚れ薬。雌雄を粉末にして振り掛けるか、酒に混ぜて飲ませれば意中の人はころりと靡くといわれていますが、ヤモリの黒焼きでは代用にもなりますまい~》

 これは例によってポンペイで独り暮らしの友人からの惚けたメールだが、生物図鑑で見ると、ヤモリの英語名はGECKO、トカゲ目ヤモリ科の爬虫類で、夜行性・食虫性でアジア太平洋の熱帯・亜熱帯を中心に生息。体形はトカゲに似てケッケッケッと甲高い声で鳴き、体長は最大12センチ程度、足裏の吸盤構造で天井や壁面に張り付き、保護色で壁などの色に合わせて身を隠し、夜間に出て昆虫類を捕食し、毒性はなし。(因みにイモリはサンショウウオ目イモリ科の両生類で日本国内棲息)。

 南の島の住人であれば、ゲッコーが羽蟻や蚊など害虫類を食べてくれる“役に立つ共生者”であることは分っているので、多少鳴き声がうるさくても、先ず嫌ったり追い払ったりすることはない筈。

 ところが、ゲッコーの何たるかを知らない観光客は多い。従ってコテージや低層ホテルなどではゲッコーに纏わる珍事件が今も起きている。

 まして、1970~80年代の新婚旅行華やかなりし頃には、今と違って純真なカップルが多かった。「大変です、鰐の子供が部屋に居ます助けて!」という緊急電話。さては隣の動物園の鰐かイグアナでも部屋に闖入したかと駆けつけてみると、相手はたった7センチのゲッコーで拍子抜け。確かに良く見れば鰐のミニチュアーに見えなくもないが~。

 また、深夜にチェックインした新婚カップルが、ベッドインしようとブランケットを持ち上げた途端、粋なゲッコーがシーツの上に寝ていて、「私たちの結婚は呪われたのよ」と花嫁が一晩中泣き止まなかった珍事もありました。あの晩の新郎の情けない顔は未だに忘れられません。

 また世の中には妙に爬虫類が好きな女性も居るもので、或る花嫁は天井から枕元に落ちてきたゲッコーがすっかり気に入り、日本に連れて帰りたいと言い出す始末。ところが新郎の方は逆に爬虫類恐怖症でもう顔面蒼白。ルームメイドの報告によると、「あの二人は毎日喧嘩してましたよ。帰ったらきっと成田離婚じゃないの?」とのことでした。

 皆さま、南の島へご旅行の節は「ゲッコーは結構」とご承知下さい。

(HIRO株式会社発行:雑学新聞「せれね」より転載)

小林 正典