帰還兵星氏の壮絶な戦争体験を昨年の8月号から4回にわたりお伝えしてきましたが、今回が最後になります。

 日本人会が去る7月9日(日)に2017年第1回清掃・慰霊行った際の出来事でした。この行事には星氏も同行され、ジーゴの平和記念公苑、最後の激戦地の慰霊・清掃を終え、アガットで全ての慰霊行事も終わり軽食を採ろうとしたその時、一人の少年が私たちのグループに近づいてきました。旧日本軍帝国陸軍の夏服姿で、陸軍の水筒を肩から掛け、必勝のハチマキ(逆さまでしたが)を巻いていました。名前はショーン、歳は15歳。父親は元アメリカ海軍の兵士で、母親は日本人とのこと。夏休みを利用して父親と共にグアムの歴史の勉強に来たとのことです。 ショーン君は、星さんに対峙すると直立不動となり、軍隊で行うように敬礼をしたのです。勿論、星さんもなんら躊躇することなく当然のことのようにショーン君に返礼をしました。二人のこの行動があまりにも現代にそぐわないものであるにもかかわらず、当たり前のことのように自然に行われている様を目の当たりにして、そこにいた日本人会のメンバーも全員目が釘付けになり、自分たちも直立不動で二人を見守らなくてはいけないような気になりました。星さんは14歳の時にサイパンから選抜されてグアムに来ていたので、おそらく当時の自分を見ているような気分になったのではないでしょうか。ショーン君は星さんに矢継ぎ早の質問を投げかけました。 僅か数分間の会話でしたが、その二人を皆が取り囲み、そこには時を超えた不思議な光景がありました。最後に二人はお互いに向かい合い、再び敬礼をしその場を去りました。

 ショーン:今の若者についてどう思うか-星:当時の自分に比べると違いすぎる。あまりにも自由すぎる。

 談話Vol. 4の最後で星さんは「もし帰国せずそのままグアムに残っていたら」という気持ちを吐露していますが、命を賭して守った祖国があまりにも変わってしまったという星さんのやるせない気持ちを感じずにいられません。

 今回そもそもグアム日本人会が星さんと行事を共にすることになったのは、昨年3月24日に遺骨収集推進法が衆院本会議で可決された結果です。この法律は、先の大戦で日本国内(特に沖縄、硫黄島)および国外での戦没者や強制抑留中に死亡した兵士の遺骨を収集し、日本に送還、遺族に引き渡すというものです。条文では、”国は戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的に策定し、確実に実施する責務を有する”と明記し、これが“国の責務”であることを明確にしています。法律は更に、収容された遺骨の鑑定に関する体制整備のほか、情報収集や遺骨の送還作業などを担う法人を新たに指定することを規定し、日本戦没者遺骨収集推進協会が2016年7月より活動を開始しました。星一男さんもその調査作業の一環として7月の情報収集作業に参加したのです。

 先の大戦で、グアムに当初21,000人いた日本兵は、19,000人が亡くなり、1,300余人が帰還しています。一方、アメリカ軍の戦死者は1,862人、グアムの住民の戦争犠牲者は1,123人、負傷者は13,270人となっています。未だに19,000体の遺骨がグアムに取り残されてままになっています。

 法律の発効以来一年半以上が経過していますが、殆ど作業が進んでいないのが現状です。これにはグアムの複雑な事情があります。関係機関には、マリアナ統合司令部、ナショナルパークサービス、アンダーセン空軍基地司令部、グアム歴史保存局などがありますが、それぞれに別々の要求事項があり、その許可を受けるのに時間がかかっているのです。例えば、アンダーセン空軍基地内で骨の発掘をする場合、まず遺骨のある場所をGPSで特定をし、その場所の発掘依頼をします。実際許可が下りたとしても、発掘出来る範囲は3メートル四方ほどに限られており、少しでも狂いがあると、遺骨が全く発見できないこともあります。

 今回、アンダーセン基地内に星さん、推進協会のメンバー、空軍の考古学者、資源管理官で入りました。星さんの上官の遺骨が基地内の海岸近くの高台に残されていることを確認するためでした。3時間以上をかけ、複雑に入りくみ重なり合った樹木をかき分け、また、海水で浸食されてゴロゴロにむき出した岩場を歩いて現場の崖の傍までたどり着きました。星さんは20メートル以上もある崖を上っていけば上官の遺骨があるといいましたが、垂直に切り立った崖はとても登っていけそうな場所ではありませんでした。安全と思われるコースを取っていくのですが、結局、軍から許可された退場時間が近づいたため、遺骨を確認することができず無念のまま帰って来ることとなりました。星さんの記憶は正しいのですが、如何せん65年以上の時間の経過は、自然の状態を大きく変え、星さんの身体能力の衰えとともに、簡単な調査作業が簡単ではなくなってきています。このように、記憶、記録が時と共に失われてきている現状からすると、一日でも早い遺骨回収作業が喫緊の課題です。情報収集の期間は残り1年2ヶ月という切羽詰まった状況のもと、関係機関の許可が下り、少しでも早く、調査作業の許可が下りることを祈ります。

 なお、グアムでの実作業を協会より任されているのがフロンティアツアーの安部三博さんです。調査作業の許可が下りると新聞などを通してグアムの一般の人からも遺骨に関する情報収集を行いますが、現時点でもお知り合い等に遺骨のある場所等の情報がございましたら、ぜひ、安部さん(TEL:482-5360)までご連絡ください。宜しくお願いいたします。

文責: 坂元 吉裕